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『浮遊霊ブラジル』(津村記久子)【感想】

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津村記久子さんの作品をたくさん読もう(3回目)。

というわけで今回紹介する本は『浮遊霊ブラジル』です。短編集です。

「給水塔と亀」

定年退職をした独人の男性が、故郷に戻る話です。通販で買ったクロスバイクに乗ってスーパーに向かうところで「ビール、ビール」というセリフが繰り返される部分が印象的でした。ビール、ビール。

「浮遊霊ブラジル」

生まれて初めての海外旅行を前にして亡くなり、成仏できず浮遊霊となった三田さん(男性)が、人に乗り移りながらアラン諸島を目指す話です。

人に憑依する際のことばが「スーパー銭湯に行けばいいんだ!」というのに笑いました。死してなお女の裸が見たいものかしら。

「地獄」

温泉旅行にいった帰りのバス事故で死んでしまった私とかよちゃんが、それぞれの地獄で地獄タスクをこなしながら生活していく話です。

「その人に合った地獄」とか「その人らしい地獄」を提供するというポリシーが、地獄運営側にはあるらしい(71頁)」というのが面白かったです。主人公は「物語消費しすぎ地獄」、かよちゃんは「おしゃべり下衆野郎の地獄」にいます。

最後にはオチもあって、なんとなく落語っぽさを感じました。

 

上記3編のほかに「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」、「アイトール・べラスコの新しい妻」、「運命」、「個性」の4編、あわせて全7編が収められています。すきま時間で読めるじわりと面白い本だと思いました。