ミステリー

不動産ミステリー『物件探偵』(乾くるみ)【感想】

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そろそろ引越しをしたいなと思いつつ本屋をほっつき歩いていたら本書が目に入りました。ということで今回紹介するのは『物件探偵』です。賃貸ではなく、中古物件の売買に関するミステリー短編集で、全6編が収められています。

中古物件にまつわるミステリー

全6編の中には、高利回りに惹かれて購入したはずが実は詐欺だったとか、巧妙な家賃横取り事件とか、よくありそうな悪徳業者が出てくる話から、大家さんのためを思って暴走する仲介業者とか、人の家に勝手に住もうとする変人とかが出てくる話まで多種多様です。

神出鬼没の宅地建物取引主任者、不動尊子(ふどうたかこ)

各エピソードの主人公が直面する事件を、どこからともなく現れる宅地建物取引主任者(現:宅地建物取引士)の不動尊子が勝手に解決していきます。

この不動尊子は、登場人物のもとへやってきて、物件の気持ちがわかるとか言ってくるのですが、傍からみればただの怪しい人です。ドアの前に不審者がいるだけで恐ろしいのに、部屋が涙を流しているとかわけわからんことを言われたら、寿命が縮まると思います。

しかし不動さんの存在によって不動産の悲しみや喜びの声などが買い手・居住者に伝わって、最後は皆よかったね、となるので安心です。

『イニシエーション・ラブ』の作者

物件にまつわるミステリーって、自分にはあまりなじみがなかったので、誰が書いているのかと思いきや、かの有名な『イニシエーション・ラブ』(と言いつつ私は読んだことがない)の著者、乾くるみでした。

帯には『日本中を騙したベストセラー作家が、不動産に騙されないコツを教えます』の文字。うまいこと言うなぁと思いました。『イニシエーション・ラブ』も読んでみたくなるわな。

それにしても、何かと騙される(?)ことの多い不動産売買や賃貸。不動尊子みたいな人が身近にいれば心強いのに、と思いました。