アガサ・クリスティの『クリスマス・プディングの冒険』(早川書房)は短編集で、6つの物語が収録されています。ポアロものが5編、マープルものが1編。
前書きによりますと、この短編集はクリスマスのご馳走本で、表題作の『クリスマス・プディングの冒険』と『スペイン櫃の秘密』がメインディッシュのようです。
クリスマス・プディングの冒険 あらすじ
ポアロは、結婚を控えたある国の王子から、自分の失態により奪われてしまった国宝のルビーを取り返してほしいと依頼されます。どうやらそのルビーを盗んだ人物はある田舎の邸宅でクリスマスを過ごすらしい。寒い冬にイギリスの田舎の邸宅など行きたくないポアロでしたが(なんたって寒いから)、しぶしぶ引き受けます。
そこでポアロはクリスマスを過ごすのですが、思わぬ「殺人事件」が起きて…という話。
クリスマスらしく、多種多様のご馳走が出てくるのも見どころです。
スペイン櫃の秘密 あらすじ
ポアロが新聞で読んだ「スペイン櫃事件」に興味を持ち、解決をするというお話。
ある裕福な独り者が、自宅に5人の友人を招いてイブニングパーティーを開催。5人のうち1人は急用により不参加となったが、残る人たちでパーティーを行い、何事もなくパーティーは終わった。翌日、パーティー会場に置いてあったスペイン櫃から死体が発見された。死んでいたのは急用で不参加となったその人だった…。
ポアロの秘書:ミス・レモン
この物語の冒頭には、ポアロの秘書であるミス・レモンが登場します(なんてさわやかな名前! )。年の頃48。ポアロに言わせてみれば、彼女は人間の形をした機械、精密無比な道具であるとか(失礼な)。想像力の類は持ち合わせていない有能な秘書のようです。
ポアロが登場する小説では、ポアロ自身の「噴飯もの」の容姿がよく取りざたされますが、ポアロに負けず劣らず癖のある人もまだまだいるようです。
前書きにある、クリスティの「クリスマスおめでとう」の言葉にあるように、クリスマスの時期に読むと一層雰囲気がある本だと思いました。