今回紹介する本は『あしたの君へ』(柚木裕子)です。
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家裁調査官…て何?
主人公は望月大地。家裁調査官になるべく、実務研修中の家裁調査官補(通称カンポちゃん)だ。物語は大地が実務研修中に担当した案件を中心に進んでいく。ちなみに家裁調査官とは、少年事件や離婚問題の背景を調査し解決に導く人のことらしい。
本書は5つのエピソードからなり、少年事件が2つ、離婚にまつわる話が3つです。
大地は、「自分はこの仕事に向いていないのではないか」と悩みながらも、同僚や先輩に助けられながら役割をこなしていきます。
第一話「背負うもの」では、窃盗を行い逮捕された17歳の少女が相手です。遊ぶ金欲しさにやったという少女。しかし友人や恋人はいないようだし、夢中になっている趣味もなさそうだ。なぜ彼女は罪を犯してまでお金が必要だったのか、なぜ、なぜ…真摯に問い続け、調査に奔走することで少女の背負うものを紐解いていきます。
悩める人に寄り添う人
本書の解説は家裁調査官の益田浄子さんが書いているのですが、仕事をするうえで、「曖昧さに耐えること」を大切にしているという言葉が印象的でした。ともすれば白黒つけたがったり、ゼロイチでものを考えてしまいがちな世の中で、答えが出ないような状況に耐えること、悩み苦しんでいる人に寄り添うこと、それでいて前を向いていること。
家裁調査官のお世話になったことはありませんし、そんな職業があることすら知りませんでしたが、大切な職業であるなと思いました。そして大地のような人が家裁調査官にいると思うと、なんだかほっとした気分になりました。
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