容疑者Xの献身(東野圭吾)は、第134回直木賞を受賞した作品です。久しぶりに読み直してみました。
あらすじ
花岡靖子は母一人子一人のシングルマザー。別れてからも疫病神のようにつきまとう前夫から逃れるため、職を変え住所を変え現在の場所に落ち着いていた靖子だったが、それでもある日突然、前夫は靖子の前に現れた。
執拗な前夫を衝動的に殺してしまう靖子。呆然とする彼女の前に現れたのは隣人の高校教師、石神だった。靖子に対し秘めやかな恋心を抱いていた石神は、靖子ら花岡親子を助けるため、その天才的な頭脳を用いて驚くべき犯罪を計画していく…。
献身、ここに極まれり
本書のタイトルである『容疑者Xの献身』。この題名が、本の内容をそのままズバリ表しているなと思いました。ほんとこの上ない題名だと思います。
心から愛した人のことを完璧に守るために、石神が立て、実行した驚愕の計画。石神のあまりにも深い愛、そして石神が払った大きな犠牲を知ってしまった靖子はきっと、自分だけがすべてを忘れ、のうのうと生きていくことは出来なかったのでしょう。
石神が企てた計画は、靖子自身の告白により失敗に終わってしまいますが、花村親子がこういう人間だからこそ、過去の石神は救われたんじゃないのかなとも思いました。
生きているだけで、誰かを救っている
本書で一番印象に残っている言葉は、なぜ石神がこんなにも花村親子に対して献身的であるか、そのきっかけに触れている部分にあります。
「人は時に、健気に生きているだけで、誰かを救っていることがある。」(386頁)
この言葉に一番共感しました。誰かの存在が生きる糧になるというのは、すごくわかる気がします(だからといってここまで献身的になれるかは謎)。
本書はミステリーですが、ミステリーに興味がなくても間違いなく面白く読める本です。映画も面白いです。ぜひ手に取ってみてください。