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大切な、家族の物語『星の子』(今村夏子)【感想】

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今年(2020年)公開が予定されている映画『星の子』の原作を読んでみました。

『星の子』あらすじ

主人公の林ちひろは、生まれたころ、とても体が弱かった。両親は娘を救いたい一心で専門医に診てもらったり、民間療法を試したり、ありとあらゆる手段を講じたが効果がない。そんな折、会社の同僚に勧められた「水」を使ってみたところ、驚くことにちひろの症状が改善していったのだった。

この出来事をきっかけに、「あやしい宗教」にのめりこんでいく両親と否応なしに巻き込まれていく子どもたち…。

大切な家族、離別の予感

生まれたばかりの我が子が病気で、それを治すためならどんなことでもやる。このことは親としてはごく自然のことのように思えます。一方でそれによって「あやしい宗教」へのめり込むことになったら、外側にいる人間は止めようとしたり、離れていったりするのも想像できること。

ちひろの両親が「あやしい宗教」へのめり込むようになってから、「お水入れかえ事件」を起こしたちひろの叔父とは長いこと疎遠になっていたし、ちひろの姉は家を出て行ってしまった。

幼かったちひろももうすぐ高校生。叔父がちひろを引き取るというような話もあり、これから家族がどうなっていくかわかりません。

 

最後のシーンでは、ちひろが両親と流れ星を見ています。

生まれて間もないころ、奇跡の「水」により病から回復したちひろを、両側から頬を寄せて喜んでいた両親。物語の最後に同じように頬を寄せて星を見る親子。「あやしい宗教」がもたらした水が家族を救い、同じその宗教が家族の離別(の予感)の原因となる。親子がお互いを大切に、大切に思っていることが伝わってくるだけに、この後の展開の不透明さに、やるせない気がしました。

今村夏子さん(なんてさわやかな名前!)の作品は、他に『こちらあみ子』を読んだことがありますが、何となく雰囲気は似ているかなと思いました。主人公の女の子の感じとか。ただ『こちらあみ子』に比べると『星の子』のほうがやさしい物語かと思いましたが。

映画化もされるようですので、気になった方はぜひ。