オードリー・タンの柔和な顔とトランスジェンダーという情報を見て、興味を持ち本書を手に取りました。
ということで、今回紹介する本は『オードリー・タン 自由への手紙』です。
主な内容
オードリー・タンへの2度にわたるインタビューをまとめたものです。4つのチャプターに分かれています。
チャプター1 格差から自由になる
チャプター2 ジェンダーから自由になる
チャプター3 デフォルトから自由になる
チャプター4 仕事から自由になる
印象に残ったこと
もともとジェンダーに関する部分に興味があって読んだのですが、印象に残ったのは以下3点です。
自由をお互いにシェアしよう
オードリー・タンは、自由には①ネガティブ・フリーダムと②ポジティブ・フリーダムの2種類があるといいます。
「「ネガティブ・フリーダム」とは、既存のルールや常識、これまでとらわれていたことから解放され、自由になること」(本書を手にした日本のみなさんへ、4段落)
「「ポジティブ・フリーダム」とは、自分だけでなく他の人も解放し、自由にしてあげること」(本書を手にした日本のみなさんへ、6段落)
自由ってかなり個人的なものだと思っていたので、「自由をシェアする」という言葉にびっくりしました。
自分がそれまで囚われていたことから自由になったら、かつての自分のように、何事かに囚われていたり苦しんでいたりしている人を解放する手伝いをしよう、という意味だと思いました。また、これは自由を体現している人でないと言えない言葉だとも思いました。
人を年齢という枠組みで捉えない
オードリー・タンは本書のなかで「ピグマリオン効果」について触れています。ピグマリオン効果とは、例えば「大人が子どもに対して、大人のように振る舞うことを期待していると、子どもは期待に沿うべく育」(第1章、03節、2項、6段落)つというものです。その逆もまた然りです。
私がこの文章を読んで思ったのは、自分は年齢で人のことを判断することが実に多いということです。
同じ職場で働く人で若いのにしっかりした人、年上なのに危なっかしい人がいると、若いのにすごいなぁとか、年上なんだからもう少ししっかりして欲しいなぁとか勝手に思っていました(私も思われているのかもしれませんが)。
ちょっと本書の文脈からは逸れるかもしれませんが、相手と対峙するときに「年齢」ばかりにとらわれないで、その人の経験や性格なんかを考慮するとコミュニケーションがうまく取れるのかなと思いました。
男女から自由になる
例えばLGBTQ+の人の中には、自分がセクシャルマイノリティであることを隠して生きている人がたくさんいると思います。
しかし、オードリー・タンはこう言います。「ジェンダーも文化も、インクルージョン。境目というものは、実はどこにも存在しない」(第2章、08節、4項、9段落)
台湾には「ジェンダー表現に関しても、性別が3つ、あるいは5つあったりする原住民がいる」(第2章、08節、3項、6段落)とのことで、昔から男女2元論ではなかったということです。ほんまかいな、と思いましたが、そういう文化があると知ることで、男女の性にとらわれた自分の意固地な脳みそを少しでも柔らかくできるのかなと思いました。
また、少数派であることを隠して生きていると、自分以外に同じような立場の人を見つけにくい(そもそも少数派だし)と思うのですが、ここに同じような人がいるよ! 台湾では古の時代からそうだよ! って知ることで、勇気をもらえる気がしました。
インタビュー形式ということで、結構いろんな話題が出てくる印象の本でした。本書1冊読んでオードリー・タンのことが分かるといった本ではありませんでしたが、本書をきっかけに、興味のある分野をもっと調べてみたくなる本です。
(引用は 語り:オードリー・タン 編者:クーリエ・ジャポン編集チーム(2020年)「オードリー・タン 自由への手紙」[キンドル版],検索元 amazon.com)