「ロザンの楽屋」で紹介されていて気になったので、読みました。
ということで、今回紹介する本は『新しい世界 世界の賢人16人が語る未来』です。
主な内容
16人の「21世紀の賢人」たちが、世界のこれからについて論じた、インタビュー記事をまとめた本です。主に2019年~2020年のインタビュー内容です。
登場する16人は以下の通りです。
①ユヴァル・ノア・ハラリ ②エマニュエル・トッド ③ジャレド・ダイアモンド ④フランシス・フクヤマ ⑤ジョゼフ・スティグリッツ ⑥ナシーム・ニコラス・タレブ ⑦エフゲニー・モロゾフ ⑧ナオミ・クライン ⑨ダニエル・コーエン ⑩トマ・ピケティ ⑪エステル・デュフロ ⑫マルクス・ガブリエル ⑬マイケル・サンデル ⑭スラヴォイ・ジジェク ⑮ボリス・シリュルニク ⑯アラン・ド・ボトン
聞いたことのある人も何人かいますが、著書を読んだことがあったのはマイケル・サンデルだけでした(おい)。
印象にのこったこと
信頼が大事
ユヴァル・ノア・ハラリ「私たちが直面する危機」から。
「民主主義の国においては、有権者には、いま起こっていることを忘れずにいて欲しいです。そして、いま我々がこれほど必要としているグローバルな協力関係を作ることのできない、外国人嫌悪の指導者を選ぶことの危険性に気がついてほしいと思います。」(23頁)
どの国も、自国ファーストではあると思います。ただ、他国との敵対感を深め、コロナのような世界を巻き込む脅威に対して国際協調ができないと困るよね、ということだと思います。国家間という大きな話でなく、例えばひとつの会社の部署間の関係にも当てはまりそうですね。自部署のことだけ考えていると、全体の関係性が悪くなるという。
ドライトッド
16人のインタビュー記事で一番印象に残ったのは、エマニュエル・トッドでした。
「国の存亡を決めるのは出生数であり、特定の死因の死者数ではありません。(中略)ドライな分析で大変恐縮ですが、社会の活力の尺度となるのは、子供を作れる能力であり、高齢者の命を救える能力ではありません。もちろん、お年寄りを救うのは道徳上、絶対しなければならないことではあります。」(31頁)
「問題は物資の生産なのです。グローバル化というゲームに全面的に参加してしまったおめでたい国々があった一方、自国の産業を維持し、いまも必要な物資(検査キット、マスク、人工呼吸器)を製造できる国々があるのです。」(35頁)
そんな見方があったかぁ、と目からウロコでした。失われる数ではなく生み出せる数に着目するとは!
人口の話も、グローバル化の話も、バランス感覚を失ってはいけないなと思いました。例えば、海外に工場を作りすぎて自国の産業を壊滅させてしまうのも、逆に国境に壁を作って海外との交流を断ってしまうのもバランスが悪く、最善ではないと思います。自国を守りつつ他国との連携もする、各国すごく難しい舵取りをしているのだな。
幸福≠お金
ダニエル・コーエン「豊かさと幸福の条件」より。
「なぜ資本主義の世界では、このような他人と自分の比較が、お金という尺度だけに集中するのか」(115頁)
「私が資本主義の世界に関して残念に思うのは、お金が人間関係においてこれほど大きな意味を持つようになってしまったことです。」(115頁)
私自身、もっとお金があればもっと幸せになれるとつい思ってしまいますが、なんでなんですかね。お金を絶対的なものと思ってしまっているからでしょうか。
そのほか、ナオミ・クラインのインタビューでは、どんな人もウイルスの前では平等で、皆が同じ災厄に見舞われているという言説を否定するなど、どのインタビューでも(インタビューした時期もあると思いますが)コロナウイルスが浮き彫りにした世界の問題などに触れています。
ちょうど今、自分事として捉えられる話題も多いので、生きている人にはぜひ読んでみて欲しい本です。