今回紹介する本は『それでも、医者は甦る-研修医志葉一樹の手術カルテ-』です。タイムリープものです。
あらすじ
主人公の志葉一樹(しばかずき)は、激務で若干やさぐれ気味の研修医。ひょんなことから仲良くなった患者、湊遥(みなとはるか)を必ず助けると約束したのだか、手術は失敗し、遥は亡くなってしまう。
もし過去に戻れるなら…そう思った志葉はなんと手術の前日へタイムリープしていた! 次こそは遥を助ける、そう心に決め手術に立ち会う志葉。しかし手術はことごとく失敗。幾度となく繰り返されるタイムリープの中で、果たして志葉は遥を助けることが出来るのか?
ひたすら死と立ち会うタイムリープ
タイムリープものって結構長い期間を戻るイメージが強いのですが、志葉は遥の手術前日~遥死亡までの短い期間をひたすらタイムリープします。
助けたい! と思っている相手が死ぬ瞬間に何十回、何百回も立ち会うことになるのですから、これはかなり地獄ではないかと思いました。タイムリープすることで助けられる命があるかもしれないという希望と、助けられるまで永遠にタイムリープから抜けられない苦しみと、どちらが大きいのだろうか、と。無数のタイムリープを繰り返し、遥の手術が失敗する原因が明かされる過程は若干ミステリーですね。
医者だって人の子
本書では、医療従事者のおかれている過酷な労働環境がひとつ大きなテーマになっていると思います。朝から晩まで働いて、時には患者のご機嫌をとったり、急患の酔っ払いにゲロ吐かれたり、助けられるはずの人を助けられなかったり…。遥の手術失敗も、そんな環境が引き起こした事件だったのだと思います。
医者が患者を助けるために奮闘し、その姿が次の医者を育てる、そんな循環が見られる作品だと思いました。お医者さんってやっぱすごいわ。