電車に乗っていると、たまに並走することがあります。窓越しに向こうの人がはっきりと見えても、大概の場合、目が合うこともなく追い越し追い越されるものです。でも、もし向かいの電車で殺人の現場をみてしまったら…?
今回紹介するミステリーはアガサ・クリスティ『パディントン発4時50分』です。ミス・マープルが登場します。
あらすじ
クリスマスの買い物を済ませ、4時50分発の電車に乗ったマギリカディ夫人。うたた寝から覚めた時、並走する電車のブラインドが上がった。マギリカディ夫人の目に飛び込んできたのは、男の後ろ姿と、男に首を絞められている女の姿だった。
この殺人を目撃したマギリカディ夫人は、駅員や警察に事の次第を話したが、電車から死体は発見されなかった。死体はいったいどこへ消えたのか?
マギリカディ夫人の友人であるミス・マープルは、死体を見つけるため、知り合いの家政婦ルーシー・アイルズバロウをある屋敷へ派遣したのだった。
パーフェクト家政婦:ルーシー・アイルズバロウ
ルーシー・アイルズバロウはオックスフォード卒、32歳の家政婦です。名門大学を優秀な成績で卒業し、優れた数学者になるといわれていた彼女が選んだのはしかし、家政婦という職業でした。
金を得るには不足に目を向けることが必要⇒熟練の家事労働の深刻な不足に目をつける⇒家政婦として大成功という図式。いまやイギリス中で名の知れた家政婦として成功しています。目の付け所がすごいですね。本書が書かれたのは1957年ですから、相当先進的な心を持った人だったのではないかと想像します。
本書でもまさに女傑、というような活躍ぶりが描かれます。そしてモテます。
誰だって惚れちゃうよ
ルーシーが派遣された屋敷には老主人とその息子、娘婿など、5人の男性がいますが、なんと屋敷の全員から言い寄られます。ちなみに娘婿の子どもからも、お父さんと結婚して欲しいと望まれるくらいのモテようです。
最後は、誰かと結婚するだろうという終わり方をするのですが、相手が誰なのかは書かれていません。ミス・マープルにはわかっているようですが! 誰なのか気になりますね。
有能で頼もしいルーシー・アイルズバロウは、『エッジウェア卿の死』に登場するカーロッタ・アダムズと同じくらい好きなキャラクターなので、他作品にも出ていて欲しいところですが、本作以外には登場しないみたいです。残念。
さて、ルーシーが死体を発見した後は、死体の女性は誰か?誰が殺したのか?を中心に話が進んでいくのですが、捜査は難航し、屋敷の中で次なる殺人まで起きてしまいます。最後はミス・マープルが一芝居うって見事犯人を捕まえることができたのでした。めでたし、めでたし。
日本でテレビドラマ化してました
パディントン発4時50分は、2018年に日本でテレビドラマ化されていたみたいですね。有名な俳優がたくさん出ているので観た方も多いのではないでしょうか。Amazonプライム会員なら無料で視聴できるみたいです。今度観てみよう。