ミステリー

犯人当て小説『どんどん橋、落ちた<新装改訂版>』綾辻行人【感想】

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今回紹介する本は『どんどん橋、落ちた<新装改訂版>』です。犯人あてミステリーで、全5話が収められています。

主な内容

作家「綾辻行人」のもとにU君が訪ねてきます。曰く自分の書いた犯人当て小説を読んで欲しい、と。犯人当て小説というのは、以下のような小説です。

出題者がまず「問題篇」を朗読し、そこで「手がかりはすべて出揃った。さて、犯人は誰か?」という例の「挑戦状」差し挟まれる。参加者の解答を募ったのちに「解決篇」が示され、正解者には何某かの賞品が与えられる。―とまあ、そういった趣向の“お遊び”である。」(13-14頁)

「綾辻行人」は問題篇を読んで推理するのだけど、見事騙される……といった話です。

犯人を当てろ!

例えば表題作の「どんどん橋、落ちた」では、山へキャンプに来た人の1人がどんどん橋の崖から突き落とされて死んでしまいます。その実行犯と犯行方法を当ててみろ、という内容。

私は犯人が分からなかったのでそのまま読み進め、解決篇で「はぁ?」となりましたが、わかる人にはすぐピンとくるようです。

自ら推理したい人、騙されたい人向け

全編読者への挑戦状がついているので、日ごろから推理小説で犯人当てをしている人は本作も楽しめると思います。

また、犯人当て小説は叙述トリックが使われることが多いみたいですが、まんまと騙されるのも楽しいですね。日頃いかにテキトーに雰囲気で文章を読んでいるかよくわかりました。

作家はつらいよ

5話中のどれを見ても「綾辻行人」は締め切りに追われ精神的に追い詰められていて、本作はだいぶ苦しい時期に書いた本なのかなぁと思いました。各話のプロローグ、エピローグでは作家本人の日常が描かれているところもちょっと面白い作品です。