ミステリー

手記の書き方 Audibleで聴く『アクロイド殺し』(アガサ・クリスティ)【感想】

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例えば『シャーロックホームズ』シリーズでは、相棒のワトソンが語り手となって物語が綴られていきます。ということは、ワトソンというフィルターを通った内容が読者に伝えられるわけです。

本を読むときにあまり意識したことはなかったのですが、誰の視点から描かれているのか、ということが意外と大事だったりすることもあります。

さて、今回紹介する本はアガサ・クリスティ『アクロイド殺し』です。ポアロものです。この物語は、シェパード医師の手記による物語となっています。

あらすじ

財産家のアクロイドが殺された。彼の部屋からは、先日自殺を遂げたフェラーズ夫人からの手紙がなくなっていた。財産目当ての殺人か。夫人の秘密に関する殺人か。

事件に関わるすべての人がそれぞれに秘密を隠し持っているなか、ポアロが事件の解明に動き出す。

試される読者

本作はアクロイドの友人にして第一死体発見者のシェパード医師の手記という形をとっています。シェパード医師は、事件が起きてからずっとポアロと行動を共にする、本作におけるポアロの相棒みたいな人です。

シェパード医師を含め、登場人物全員が何らかの秘密を持っている状況で、どのように物語が描かれていくのか、その目・耳で確かめて欲しいと思います。

ちなみに私は、初めて読んだときは「あ、この人が犯人なんだ」くらいの感想しか持ちませんでしたが、犯人を知ってから読んだ2度目では、ぞくぞく感が増してより楽しめました。

最後にポアロが犯人を言い当てたあと、もう一度最初から聴いてみると、すべてが「そう」としか思えなくなります。

ダンディーポアロ

Audibleでクリスティ作品を聴いたのは3作目ですが、今回のポアロが一番ダンディーな声をしていました。私の中ではもう少しすっとんきょうな声をしているイメージでしたが。ま、こんなポアロも悪くないなと。

ちなみに本書には図がいくつか出てきますが、Audibleではもちろん図を見ることは出来ません。見られなくても本筋にさほど影響はないので、読んでも、聴いても楽しめる作品だと思います。

2度聴必至の本書、ぜひお試しください。