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『コンビニ人間』(村田沙耶香)【感想】

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世界中で読まれ、Audible文学チャンネルで西加奈子さんが「歯茎から血が出るほど悔しい」と言っていた『コンビニ人間』。名前は知っていましたが、どんな話が気になりました。

というわけで今回紹介する本は『コンビニ人間』です。第155回芥川賞受賞作です。

あらすじ

古倉恵子、36歳。彼氏なし、恋愛経験なし。18年間コンビニでアルバイト店員をしている。

小さい頃から「普通」からズレた人間だった。コンビニ店員になって初めて「世界の部品」として存在することができた私。

しかし、世間はそれを「普通」とはみなさない。ひょんなことから同じコンビニをクビになった男白羽と一緒に住むことになり、ついにはコンビニ店員を辞めることになるが…。

読んでいる最中に思い浮かんだ作品

古倉さんのズレた感じを見て、今村夏子さんの『こちらあみ子』を思い出しました。あみ子とは違って古倉さんは大人だし、自分が普通とはズレた存在として認識されていることもわかっていますが。

また、妹が子どもをあやす場面でテーブルの上のナイフを見て、「静かにさせるだけでいいならとても簡単なのに(61)頁」というところでは、岩明均さんの『寄生獣』を思い出しました(泣いている赤ん坊に「黙れ」といって泣き止ませる場面)。

印象に残った言葉

皆、変なものには土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている。私にはそれが迷惑だったし、傲慢で鬱陶しかった。(61頁)」

印象に残った言葉でした。古倉さんの両親も妹もみないい人だと思うし、古倉さんだって彼らを悲しませたくはない。でもきっと家族にとっての「普通」に寄せようとする限り、両者が分かり合うことはできないのかなと思いました。

けれど、コンビニの「声」が聞こえて、「私は人間である以上にコンビニ店員(159頁)」だと言い切れる古倉さんはすごいと思います。「部品」という言葉にはネガティブなイメージが伴いがちですが、自分が必要とされる場所を見つけている古倉さんには、コンビニ店員として誰に煩わされることもなく生きて欲しいと思いました。

 

私は本作しか読んだことがありませんが、村田沙耶香さんは、「もともとは女性の性と生殖にこだわってきた作家(斎藤美奈子『日本の同時代小説』255頁)」なんだそうです。『殺人出産』とか『消滅世界』とか。読んでみたいけど題名からして怖いぜ。