最近は新しめの本を読んでいたので、ここらでちょっと古い話でも読もうかと思いました。というわけで今回紹介する本は『ナラ王物語』です。紀元前6世紀頃に成立したお話のようです。
あらすじ
絶世の美女ダマヤンティー姫と美貌の偉丈夫ナラ王子。姿を見ぬうちからお互いに恋焦がれた2人は、めでたく結ばれた。しかし、幸せな日々は長くは続かなかった。2人の結婚に嫉妬した魔神カリ王により、ナラ王は賭け事に狂い、ついには王国を失ってしまう。
国を追われたナラ王に付き添うダマヤンティー妃。しかしナラ王はダマヤンティー妃を残して姿を消した。ナラ王を愛するダマヤンティー妃は、深い森の中、夫ナラ王の行方を探し彷徨う、愛の物語。
絶世の美女の描写:胸、尻、瞳
ダマヤンティー妃は絶世の美女で、その美しさは神々から求婚されるほど。作中ではダマヤンティー妃の美しさが様々に表現されます。例えばこんな感じ。
「眉目麗しく、髪黒く、腰は括れ、乳房ふくよかに、歯は白く輝き、面なまめかしく、気品にあふれ、臀部まろやかで、黒く澄んだ切れ長の目をもつ珠玉のような女性(74頁)」。
胸とお尻と瞳。昔も今も、見ているところはあまり変わらなそうですね。しかし大森林を彷徨い、不安に苛まれやつれてもなお、胸は豊かでお尻はまろやかと表現されるダマヤンティー妃。気になります。
意外だったのが、声についての表現がなかったことですかね。でもまぁきっと鈴を転がすような美しい声なのだろうなと想像しました。
『マハーバーラタ』における『ナラ王物語』
『ナラ王』物語は、『マハーバーラタ』(古代インドの大叙事詩)の挿話のひとつです。王国を喪失し、妃をも奪われたユディシュティラ王子一同を慰めるために、ブリハドアシュヴァ仙が語る物語です。確かに、絶世の美女ダマヤンティー妃が、姿を消した夫を探して大森林を彷徨うその勇敢な姿は、国を追われた王子たちを大いに慰めたのでしょう。
美女よ永遠に
題名は『ナラ王物語』とありますが、物語の主人公はダマヤンティー妃だと思うくらい、彼女を中心に物語は進みます。描かれるのはダマヤンティー妃の夫への深い愛情と、勇敢な心、そしてなによりその美しさです。
以下、『ナラ王物語』の一節、森の中で隠者たちの集落へ足を踏み入れたダマヤンティー妃を見た隠者たちの言葉をひきます。
「絶世の美貌の主よ。(中略)今、そなたの比類なき美貌とこよなき輝きを見た途端、われらは驚くほど感動いたしたのじゃ。」(75頁)
うーん、絶世の美女は時に災いを起こすこともありますが、一方ではいつの世も人を感動させるものなのですね。罪やな。