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『フランクフルトへの乗客』(アガサ・クリスティ)【感想】

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2021年も引き続きクリスティ作品を読もう。

ということで今回紹介するのは『フランクフルトへの乗客』です。ノンシリーズ作品です。

あらすじ

外交官スタフォード・ナイは、空港で会った謎の女にある取引を持ち掛けられる。曰く、自分は命を狙われている。この危機を脱するためにスタフォードのパスポートとマントを貸してほしい、と。面白主義のスタフォードは、女の望みを聞き入れた。そしてこの出来事により、スタフォードは世界を巻き込む陰謀に身を投じることになったのだった…。

?の連続

面白主義の主人公、スタフォード・ナイ

主人公のスタフォードは外交官という立場にありながら、少々不真面目なところがあると称される人物です。しかし、外交官という職業はよく知りませんが、正体不明の女に「パスポート貸して欲しい」と言われて、その取引に応じるなんて、外交官がそれで良いんかい! と思いました。

主人公はどこへ消えた?

一応主人公はスタフォードだと思うのですが、物語は彼抜きでどんどん進んでいきます。世界各国のお偉方がわちゃわちゃしています。

どうやら物語の世界では、青年たちが世界各地で武器を手に暴動を起こしていて、ワシントンは焼き払われ、北イタリア全土の引き渡しを要求しているらしいです。その背景にヒトラーの息子の存在があるとかないとか。また、暴動を止めるための、人を永久的に情深い人間にする薬の話などが入り乱れてきます。

世界各地での暴動ときくと、伊藤計劃の『虐殺器官』みたいなシリアスな話を想像しますが、本作にはさほど深刻さは感じられません。というか読者置いてけぼりな感じがあります。もしかしたら私が本作の背景を知らないだけなのかもしれませんが…。

約400頁にわたる「?」の最後はハッピーエンド(少なくともスタフォードは幸せ)になっているようですが、全容がつかめないまま終わってしまったよ! と感じました。

新年一発目、初謎を突き付けられた作品でした。