自分には人を殺す能力がある。殺したい人もいる。殺す日取りも決めている。だが当の相手は今にも死にそうだ! さぁどうする?
というわけで、今回紹介する小説は『死なないで』です。指1本で人を殺す不思議な能力を持つ女子大生と、その家族の物語。
あらすじ
母が病で倒れた。意識が戻らない母の看病を懸命に行う娘の路子。彼女は思う。お母さん死なないで。病気なんかで死なないで。だってあなたを殺すのはこの私なのだから。
病院で過ごす日々が、復讐心に燃える路子の意思を変えるのか。
不思議な力(?)を持つ人差し指
路子は、人差し指で対象を指さして、その対象を殺すことが出来る能力を持っています。犬、魚、象(!)などで実証済。ただ、科学的に証明されているわけではないので、たまたま指さした対象が、心臓発作を起こして死んだだけかもしれません。
ただ、たまたま指さした対象が死ぬ確率って相当低いものだと思うので、私が路子の立場だったら、自分の能力を信じてしまいますけどね。恐ろしい力です。
人との交流が自分を変える…ような気がする
あれほど復讐心に燃えていた路子。母親への復讐が完遂できたかは本書を読んでいただくとして、病院で過ごした日々が路子の意識に変化を与えたのは確かだと思います。
特に、母親の主治医の鷺森、そして同じ病院に入院している小学生の彩乃あたりの存在は大きかったかと。
人と関わりを持つことが、結局自分を変えることにもなるのだなぁと改めて思いました。
作者の井上剛氏は寡作な作家のようです。解説を見ると、2019年までに発表された長編は5作しかないようです。ということは、本書を読めば井上剛作品の20%を制覇です(多分)。
タイトルや帯が印象的な本書ですが、とても読みやすい小説です。気になった方は、読んでみてはいかがでしょうか?