こんな面白い、解きたくなる数学の本があるなんて!
ということで今回紹介する本は『解きたくなる数学』です。
ひと目で問題の意味が分かる ひと目で解きたくなる
この本は、佐藤雅彦研究室が作った数学の問題23問が収められています。ひと目で問題の意味が分かる、そして問題を解きたくなるようにデザインされた23問です。
どっちのチョコレートをもらう方がお得?
たとえば第2問。大・中・小3枚のチョコレートがあります。それぞれ正方形で、厚さは同じです。大きい方1枚、もしくは中・小の2枚をもらえます。どっちをもらうのがお得ですか? という問題。
写真と少ない文字数で、問題の意味がすぐに分かりますし、解きたい! と思ってしまいました。
自分は大きいチョコレートに中くらいのチョコレートを重ねて、はみ出た部分と小さいチョコレートとどっちの方が大きいか目分量ではかる……というおよそ数学的ではない解答しか思いつきませんでした。
ピタゴラスの定理を使おう
答えはピタゴラスの定理(三平方の定理)※を利用するというもので、目からウロコでした。
※ピタゴラスの定理
直角三角形があるとき、斜辺の長さをc、他の2辺の長さをそれぞれa、bとすると
c2=a2+b2
中くらいのチョコレートと小さいチョコレートを直角になるように配置し(辺a、b)、大きいチョコレートを斜辺cの部分に配置したとき、大きいチョコレートが線分abをはみ出ていたら大きいチョコレートをもらうほうがお得、ということでした。
こうつらつら書かれた文章を読むより、本では見開き1頁で視覚的にわかりやすく書いてあるので、ぜひ本書を読んでみて欲しいです。
それにしても、ピタゴラスの定理を使うのかぁ、という驚きとともに、ピタゴラスの定理をそのまま暗記していた自分にとって、その定理が各辺の長さからなる正方形の面積の関係を示しているなんてことまったく頭になかったので、さらに衝撃を受けました。
でもこれ2問目ですから。全部で23問ありますから。夢中になってあっという間に読んでしまいますけど、脳みそというか思考に対していい刺激が詰まっている本だと思います。
現実世界に数学が重なるとき
あとがき部分では、本書誕生にまつわるお話が書いてあります。要約するとこんな感じかと思います。
数学の面白さの前に立ちはだかる2つの壁がある。それは
数学の文章は、概して、問題自体、何を言ってるのか分からない。
数学の文章は、概して、義務的な気持ちにさせる。(130頁)
しかし現実の世界に数学の問題がデザインされると、世界が変わる。すなわち
ひと目で問題の意味が分かる。
ひと目で問題を解きたくなる。(130頁)
そんな世界が現れてくるのです。
普段数学の本なんて読まない、岩波書店というブランドに手が出せない人も多いかと思いますが、そんな人にもこれは本当に読んでみて欲しい1冊です。まずは本屋で1ページ、いかがですか?