『楽園のカンヴァス』でアンリ・ルソーを取り上げた原田マハ氏。さて今回は誰だろうか。
というわけで今回紹介する本は『アノニム』です。
あらすじ
ジャクソン・ポロックの未発表の作品『ナンバー・ゼロ』。ここ香港で、かの大作がオークションにかけられる。『ナンバー・ゼロ』を狙う謎のアート窃盗団「アノニム」と闇のコレクター「ゼウス」、果たして作品を手にするのは誰だ?
アートの力を信じる義賊たちの戦い。
アートの力を信じる義賊「アノニム」
窃盗団「アノニム」は盗まれた絵画を盗み返し、持ち主に戻すことをしています。本書に登場するメンバーは7人。いずれも高い専門性をもつ各界のプロです。そしてアートの力を信じています。綿密な計画のおかげかすべてがうまくいくので、本書でもピンチな場面は全くありません。安心して読めますね。
表紙をみて
本作の表紙はポロックの『Number 1A』です。どこかで似たような絵を見た気がすると思っていましたが、DIC川村記念美術館の図録の表紙と似ていた気がします。今はどうか知らんけど。DIC川村記念美術館にもポロックの作品が展示されています。マーク・ロスコの作品もあります。
DIC川村記念美術館は、今は事前予約制で開館しているので、本作に出てくる「抽象表現主義」に興味を持ったら訪ねてみるのも楽しいと思います。常設展は人も少ないですし、美術館の庭園も広くて気持ちが良いところです。
アートを巡る攻防
アート作品は美術館でみるくらいしかない私ですが、本当は美術館以外の場所(それこそ個人の家や教会やお寺、あるいは町そのものがアートということもありますよね)にもアートは存在し、それが経年により損なわれたり、窃盗にあったり、戦争で破壊されたりということが起きています。
そのような危機がある一方で、「アノニム」のようにアートやそれを信じる人たちを守る存在があることが心強いと思いました。また、そういうバトルが繰り返されることで、アートがさらに世界を変える力を蓄えていくのかなと思いました。
かっこいい義賊の話、読んでみませんか?