その他

『定年オヤジ改造計画』(垣谷美雨)【感想】

Photo by Blaz Photo on Unsplash

「長寿時代を生き抜くヒント」が知りたかったので読みました。というわけで今回紹介する本は『定年オヤジ改造計画』です。

あらすじ

38年間務めた大手石油会社を定年退職した庄司常雄。サラリーマン生活から解放されて、妻と楽しい老後を過ごすつもりだったが、現実は残酷だった。妻には避けられ、娘には邪険に扱われ、気づけば孤独に過ごす日々。

そんな中、息子夫婦から頼まれ、不承にも孫の子守をすることになった常雄。果たして人生初の子守経験が定年オヤジ常雄の凝り固まった価値観を一新できるのか?

我が親を見ているようで

主人公の常雄は、絵にかいたような昔風価値観のサラリーマンって感じの人です。だから、読者にとっては自分の夫や親、もしくは自分自身を思い浮かべる場面が多いのではないでしょうか。

家事は永遠に妻の仕事?

例えば、妻の十志子が旅行に行って家にいない間、洗濯する気のない常雄に対して娘の百合絵が放った言葉。

「夫は外で働いて妻は家を守るっていう役割分担が今も続いてるじゃないの」

「夫が定年退職したあとはどうなの? 父さんは家にいるじゃないの。もう役割分担は終了でしょ。それでも母さんに家事を押し付けるってどうなのよ(302頁)」

そうだそうだ! って思う人が大半じゃないですかね? しかし常雄はこう言います。

「それはそうだが、今さら家事なんて俺には面倒だよ。慣れた人間がやる方がいいんだ。人それぞれ得手不得手ってものがあるからな(302頁)」

救い難いぜ、常雄さん。

どこまでも自分本位な夫

本書の中で一番自分の親を見ているようだと思った場面はこれです。十志子が、サラリーマンだった常雄との出来事を掘り返すシーン。

「高熱の中、フラフラになりながら子供の世話をしました。そんなときでもあなたは『俺は外で食べてくるから大丈夫だ』なんて言って、それが最大限の優しさだと思ってらした(351頁)」

「俺は外で食べてくるから大丈夫だ」ってそのままそっくり自分の父親の口からきいた気がするぞ。自分が体調悪い時にそんなこと言われたら一生忘れないでしょうね。…大丈夫かな、うちの親。と少し気になりました。

自身を改造せよ

しかし子守を通じて自分の古い価値観を改めていった常雄はすごいなと思いました。子守を頼まれるという幸運もあったとは思いますが、そこから自身や息子の考えを改めていくって、特に歳をとっていればいるほど難しいことだと思うので。

こういう話あるよねってだけではなく、本書を読んで定年後の関係が良くなっていく夫婦や家族があるといいなと思いました。