「本日はお日柄もよく」って結婚式のスピーチでも耳にしたことがない、というか結婚式のスピーチなんてあまり真面目に聞いてこなかった私ですが、そこで運命のスピーチに出会った人の物語には興味があります。
というわけで今回紹介する本は『本日は、お日柄もよく』です。
あらすじ
二ノ宮こと葉、27歳。幼馴染の結婚式で感動的なスピーチを耳にする。それが伝説のスピーチライター、久遠久美との出会いであった。すぐに久遠久美に弟子入りしたこと葉はなんと、政権交代を狙う野党のスピーチライターに抜擢された!
感受性豊かで敏感で鈍感な主人公が送る、人情物語。
仕事に情熱を注ぐ人たち
「スピーチライター」という職が中心になっているため、登場人物は言葉に鋭い人々が多いです。主人公の祖母しかり、ライバルの和田しかり、師匠の久美しかり。
一番印象に残ったのは、皆がその仕事に情熱を持っているということです。言葉の魔力に魅せられたこと葉は、製菓会社に勤めるごくフツーのOLでしたが、久美に弟子入りしたあげく会社を退職し、スピーチライターの仕事に邁進します。そこまで夢中になれるものがあるってのがうらやましいです。
この言葉を胸に
解説でも取り上げられていましたが、本書で一番印象に残った言葉はこれです。
「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している(322頁)」
困難にぶち当たった時、この言葉を思い出してみたいものです。言葉は人を傷つけることもあるけれど、これだけ人を励まし、勇気づけることのできる素晴らしいものなのだと思いました。
スピーチライターに興味を持っている人や、仕事に燃ゆる人の物語に興味のある人は読んでみてください。