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『会計の世界史』(田中靖治)【感想】

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会計エンタテイメント爆誕とな? 経理というと、パソコンにかじりついて決算資料作ったり予実管理している人の姿を想像します。会社組織の中でも、エンタメからは遠いところにいる気がするのだが。

というわけで、今回紹介するのは『会計の世界史』です。

簿記の誕生は15世紀のイタリアから

簿記は15世紀イタリアで誕生しました(レオナルド・ダ・ヴィンチの時代)。

当時東方貿易が盛んだったイタリア。その一方で、海賊に襲われることもよくありました。だから現ナマを持ち歩くのは危ない! そこでバンコ(今でいう銀行)は為替手形を発行。キャッシュレスですね。これによりますます商売が発展。借入金や資産の記録を残す方法として簿記が発展していきました。また、紙が普及したことも、簿記の発展に貢献しました。

蒸気機関車が発生主義会計を生み出した

続いて19世紀イギリス、蒸気機関車の登場です。

蒸気機関車は、本体はもちろん、線路や線路をひくための土地などの初期投資が非常に大きいものです。これを最初の年にドーンと費用にしてしまうと具合が悪い。ここから減価償却(費用の平準化)という考えが生まれます。そう、鉄道会社の登場こそが、現金主義会計⇒発生主義会計への変換点でした。

未来を読め! この会社の価値は?

最後は21世紀のアメリカです。

これまでの会計の歴史では、資産は原価で評価されることが原則でした。要は買ったときいくらだったのかで評価されるということ。しかし、長い年月を経てもその評価が正当であるといえるのでしょうか? ここから時価会計という考えが出てきます(買った当時の額ではなく、今どのくらいの価値があるのかを重視する)。さらにさらに、将来の価値をも見据える「コーポレート・ファイナンス」という新領域が誕生したのです。すなわち、この企業は将来どれほどのリターンをもたらすか、です。

本書でとりわけ心に響いた一行

『ウソつきは泥棒のはじまり、発生主義は粉飾のはじまり(168頁)』

全編通してこの言葉が一番印象的でした。会計史は人間の知恵(悪知恵?)の歴史ともいえるのかも。

家計簿的な収支の計算から、将来の価値予測まで、500年の中でその役割を広げてきた会計。特に産業の発展につれて、会計にも様々な考えが取り入れられていった部分が新鮮でした。

400頁強の本ですが、読みやすいです。歴史が好きな人とか、経理やっている人ならより楽しめると思います。私ももう一度読もう。