ミステリー

マープルの旧友『魔術の殺人』(アガサ・クリスティ)【感想】

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アガサ・クリスティの生んだ名探偵のひとり、ミス・マープルはセント・メアリーミード村に住む老嬢です。庭いじりと編み物が好きで温厚な性格のマープルには、友達もたくさんいそうですよね。マープルに悩み相談する友人の姿を思い浮かべるのは、想像に難くないです。

とうことで今回紹介するのは『魔術の殺人』です。ミス・マープルものです。マープルの旧友が登場します。

あらすじ

ルースとキャリィとマープル。3人はかつてイタリアの寄宿学校で共に学んだ旧友だった。キャリィを取り巻く環境になにか不吉なものを感じたルースから頼まれ、マープルはキャリイの家を訪ねる。キャリィは3度目に結婚した夫と少年院のそばで生活をしているのだった。

ルースのいう不穏な雰囲気をマープルも感じる中、殺人事件は起きた。そしてキャリイの身にも危険が迫る…。

キャリィ宅に潜入せよ

キャリィの様子を心配したルースが、マープルをキャリィのもとへ潜入させる口実として、次のような説明をキャリィにしています。曰く、マープルは「とても困っていて、三度の食事にもこと欠くような始末(22頁)」だと。つまるところ、マープルは「ほどこし」を受けにキャリィを訪ねることになっているわけです。

プライドの高い人だったらこの時点でご破算になりそうな口実ですが、そんな状況をすんなり受け入れるマープル、さすがです。

もちろんマープル自身は何不自由なく暮らしているわけですが、相手に疑われることなく「生活に困っている旧友」の役をやってのけるわけですから、なかなかの女優ですね。

登場人物が多いよ

キャリィ自身3度の結婚をしていることから、キャリィの住むストニイゲイト邸にはいろいろな人がいます。さらに少年院の関係者も出てきます。このため、読んでいて登場人物の関係性がわからなくなることが間々ありました。けれど、最終的には複雑な人間関係はそこまで関係ない話かと思うので(本当?)、気にせず読んでも大丈夫です。

魔術とは

『魔術の殺人』というタイトルですが、みょうちきりんな霊媒師が出てきたり、超常現象が起こったりという話ではありません。むしろここでいう「魔術」はマジックショーとか、それを演出する舞台装置といった意味が強いようです。

前回紹介した『動く指』では、マープルの登場が物語の最後の方しかありませんでしたが、本作は最初からずっとマープルがいますし、マープルの旧友なんかも出てくるので、マープルが好きな人は一読してみてください。

鋭くも優しいマープルが、ますます好きになります。