今回紹介するのは『復讐の女神』です。以前このブログで紹介した『カリブ海の秘密』の続編で、ミス・マープルが登場します。
あらすじ
ある日マープルは、新聞で資産家ラフィール氏の死を知る。氏はかつてカリブ海で起きた事件を共に解決した人だった。カリブ海での事件以降は特別な交流もなかったラフィール氏であるが、氏の死から1週間後、氏の弁護士から1通の手紙がマープルのもとへ届く。それは故ラフィール氏からの犯罪捜査の依頼だった。しかし手紙には具体的な内容は全く記されていない。
戸惑いつつ故ラフィール氏の依頼を引き受けたマープルは、これまた故ラフィール氏の指示に従い旅行に出ることになる。そしてそこで彼女の「正義に対する生まれつきのかん(48頁)」を発揮することになるのだった。
死に瀕してなお
故ラフィール氏には不良の息子マイクルがおり、この息子はかつて結婚を約束した恋人を殺害した罪で投獄されています。しかしそれは本当のことなのか、その真相をマープルが解くことになります。
物語の終盤、マイクルに対して、「あなたのお父さんは、死が迫っている時、あなたに正義があることをはっきりさせようと決心された(449頁)」と言ったマープルの言葉が印象的でした。
それにしても、自分に死が迫っているなか、息子が起こした事件の真相を明らかにするために種々の手配をしているラフィール氏、ほんと只者ではありませんね。
愛ゆえに死んだ少女
マイクルの恋人であった少女ヴェリティは愛ゆえに死んだのでした。しかし、愛とは単に男女間にあるものだけを指すわけではありません。親子間、兄弟間、友人間…いたるところに存在しうる愛が人を生かし、そして殺しもするのだなと本書を読んで思いました。さて、ヴェリティを死に至らしめた愛とは…?
本書は単独でも十分読めますが、『カリブ海の秘密』とあわせて読むと、ラフィール氏の人となりなんかもわかってより面白いかもしれません。
『カリブ海の秘密』に興味がある方はこちらもどうぞ。