ミステリー

『リラ荘殺人事件』鮎川哲也【感想】

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野呂邦暢ミステリ集成』を読んで、鮎川哲也作品を読みたくなりました。

ということで今回紹介する本は『リラ荘殺人事件』です。

あらすじ

8月のある日、日本芸術大学の7人の学生が「リラ荘」を訪れた。翌日、付近の崖下で何者かの死体が発見され、その傍らにはスペードのAのカードが。それは連続殺人の始まりに過ぎなかった。警察の介入もむなしく次々に殺されていく学生たち。一体犯人は誰なのか、そしてその目的は?

学生たち個性強し

7人の学生は美術学部と音楽学部に所属しており、それぞれ個性強めです。松平紗絽女(さろめ)とか尼リリスとか、名前をみるだけでも個性強いです。とりあえず尼リリスが強キャラ過ぎるなと感じました。

警察しっかり

別荘に集まった学生たちが殺されていくと聞くと、つい麻耶雄嵩の『』とか今村昌弘の『屍人荘の殺人』みたいに外部との連絡が取れない状況を考えてしまいます。しかしこの作品は違って、最初の死体が発見された段階で警察が動いています(舞台となる「リラ荘」は孤島ではなく埼玉県と長野県の県境にあります)。

警察の目があるのに次々殺人が起きるので、「警察しっかりしろ!」と思ってしまいますが、逆に考えれば警察がいる中で凶行に及ぶってよっぽどですわな。後から思えばこの辺りもかなりのヒントだったのかもしれません。

解決は星影龍三におまかせ

最終的には「星影龍三」という素人探偵が事件を解決します。420頁強の物語ですが、登場は300頁半ば辺りです。もっと早く頼んでおけば……とか思っちゃいましたが、そんなに早く解決されたら盛り上がりに欠けますかね。

舞台は1960年代以前の日本ですが、今読んでも楽しめます。読み物として面白いので、鮎川哲也作品を読んだことがない人にはお薦めの一作です。